《今週のテーマ》
★“部下を育てる”という任務は
部下が電話の応対に四苦八苦している。耳に入ってくる会話か
ら想像すると、どうやらクライアントからクレームがついた様子。
さて、どうしたものか。
「よし、俺が変わってやるよ。任せとけ」
部下の窮地に救いの手を投げかけることこそが、管理者の任務
だとばかり、電話の応対を買って出る。これも確かに管理者の任
務のひとつかも知れない。しかし、常にこのワンパターンでは困
る。部下を育てるということからすれば、その場ですぐ助け船を
出すよりも、しばし黙って見守ることが必要かもしれないし、考
えさせるという点では、クレームについてのレポートを書かせる
ことが効果を上げるかもしれないではないか。つまり、状況によ
って対応法はいくつもあるのだ。
ある状況に、それこそ条件反射的に対応するのではなく、視点、
観点、測点を変え、深く掘り下げて考える姿勢は、非常に大切で
ある。部下に対する働きかけは、その後でも遅すぎるなどという
ことは絶対にない。
「しかし、どういう形の指導、働きかけが、その部下にとって適
切であるのかを判断するのは難しい」
なかなかに鋭い質問だ。正しい判断はいかにして可能か。私は
こういうことだと思う。部下の一年後のあるべき姿を、明確に描
けているかどうか。それが適切な判断を下すための最大の拠り所
である。一年後にはこうなってもらいたい、ここまで成長して欲
しいという部下に対する未来ビジョンがなければ、適切な指導な
どできるはずがない。それなしに叱りつけたり、手を差し伸べた
りするのは、戦略なき無鉄砲な戦闘にも等しい。
もちろん、一年後のあるべき姿を描くためには、部下を把握し
ておくことが必要になる。ここでまた、多くの管理者は挫折する
かもしれない。例えば、10人の部下がいるとして、その10人をそ
れぞれに正確に把握することは至難の技に思えるからだ。しかし、
急ぎすぎてはいけない。私はなにも、一遍に10人の特性なり、性
格なりを把握するべきだなどとは言っていない。ひとりの部下を
しっかり見つめることから始めればいいのである。ひとりをしっ
かり見つめることで“眼力”を磨けば、次のひとりはさらに短い
時間で把握できるようになるのである。
部下の把握と未来像の設定。この二つの要素がそろえば、指導
法はおのずから明確になってくる。物足りない部分については叱
咤激励することも必要だろうし、伸ばしていって欲しい能力に関
しては、然るべき評価をして、さらに意欲を持たせることも必要
だろう。また、忍耐力をもってじっと待つ姿勢が求められること
もあるだろう。こうしたキメ細かさが、部下との信頼関係を築き
上げることに一役も二役も買うことはいうまでもない。
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