《今週のテーマ》
★性悪説から性善説へ
「組織」とは、課題推進の場であり、同時に、人材育成の場で
ある、というのが私の基本的な考え方である。この二つは、いわ
ば組織づくりのための絶対的条件であり、この二本柱のうち、ど
ちらが欠けても、組織を有機的に機能させ、活性化させることは
困難といえる。
したがって、経営者は、組織づくり、および組織の運用にあた
っては、常にこの二本柱がしっかりしているかどうか、十分な配
慮をする必要がある。
その基本的な心がまえとしては、社員との「相互信頼」の気持
ちを失わない、このことがもっとも肝心である。別の言葉で表現
すれば、社員を“性悪説”でなく“性善説”で視て、心から愛情
をかたむけるということだ。
遺憾ながら、過去のわが国における企業の組織戦略は、いわば
“人間性悪説”にもとづいていたといえるものだった。勤務時間
中、あるいはときとして、勤務時間外でも、従業員の意志とは関
係なく、いかにして彼らを働かせるか、そのことだけに政策のポ
イントが置かれていた。
しかし、これでは当然のことながら、企業内における経営者と
従業員の間の信頼関係は成り立ちにくい。社員は、意志のないロ
ボットではなく、喜怒哀楽の感情をもった人間である、というこ
とを知るまでに、経営者は長い時間を要さなければならなかった
のである。
だが、現在、すぐれた企業家のほとんどが、こうした“性悪説”
的発想を捨て、“性善説”にもとづいた人間性重視の組織管理を
行っている。彼らは、組織を動かす本当の力が人間固有の愛情、
人への感謝、信頼といったものであることをよく心得ているのだ。
「仕事は人に対する思いやり、愛情を抱きながら、しかも仕事
を自分に与えてくれた運命に対する感謝の気持ちを抱きながら行
なうものです」
これは、ある有名企業家の言葉だが、至言だと思う。この言葉
には、“相互信頼”の気持ちをもつことの大切さが如実に言い表
されている。
また、松下幸之助氏は、「わが社は、商品をつくるまえに、ま
ず人をつくる」と語ったことがあるが、この松下氏の考え方も、
その根底に、“性善説”の立場に立って、社員を“愛そう”とい
う気持ちがあるのがうかがえる。
真に有効な組織戦略とは、頭で考える前にまずハートで感じる
ことが肝心なのである。
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